遊休山林を「企業の森」として活用できるのか——そんな疑問を持つ山林オーナーは、実は少なくありません。相続や購入後に手が付けられないまま放置している山林でも、企業の森として活用できる可能性はあります。
ただし、どんな山林でも無条件に受け入れてもらえるわけではなく、立地や状態によって向き不向きがあります。この記事では、企業の森の仕組みと受け入れ条件の目安、そして最適な相談先の見つけ方を整理します。
「企業の森」の正体、よくある誤解から解く
企業の森とは、企業が山林を保有・管理したり、森林保全活動を支援したりする取り組みの総称です。
よくある誤解として「企業が山林を買い取る」イメージがありますが、実際には山林の所有権は元のオーナーに残したまま、企業が利用と管理を担うケースが主流です。
仕組みのイメージはこうです。
- 山林所有者が企業に森林を無償で貸し付け、企業はその森を社員研修や環境教育、CSR活動などに活用する
- 日常の森林管理は森林組合が担い、その費用を企業が負担する
公的機関の資料によると、この形態は2000年代初頭から各地の自治体で制度化が進み、現在では多くの都道府県に企業の森づくりをサポートする窓口が整備されています。「企業の森に参加すれば高い収益が得られる」という期待を持つ所有者もいますが、直接的な収益よりも森林整備・管理コストの肩代わりや社会的価値の向上が中心になるケースが多いため、目的の整理は大切です。
アクセスが良い山林ほど有利、条件の目安はここで判断
「うちの山は対象になるのか?」と迷う所有者は多いのですが、特に相性がいいのは都市近郊でアクセスが良く、社員が訪れやすい場所にある山林です。
企業側が求めているのは、新入社員研修・健康ウォーキング・植樹体験・チームビルディングなど、人が実際に足を運ぶ活動の場です。最寄り駅や道路からのアクセスのしやすさが、受け入れ可否に大きく影響します。
山間部にある山林でも可能性がないわけではありません。CO2吸収・水源涵養といった環境貢献を前面に出した取り組みとは相性が良く、SDGsやカーボンニュートラルを推進したい企業のニーズと結びつくこともあります。荒廃が進んだ山林も、整備が可能な状態であれば再生事業の対象になり得ますが、崩壊リスクや落石など安全上の問題がある箇所は受け入れが難しくなるため、現地の専門家による確認が先決です。
実際に企業はどう使っているか、具体的な事例
ある総合建設会社は、山林の財産区と「森林の里親協定」を締結し、荒廃していたヒノキ林を再生しながら新入社員研修や社員ボランティアのフィールドとして活用してきた実績があります。
また、自治体によっては独自の取り組みとして、企業が10年間の協定を結び、寄附と整備活動をセットで行うプログラムも存在しています。協定期間中、協賛企業は社員体験・研修の場として森林を利用できる仕組みです。
林野庁の事例情報によると、企業の森は社員の健康プログラム・セラピーウォーク・ブランドPRなど多岐にわたる目的で活用されています。CSRや環境貢献だけでなく、人材育成・福利厚生・自社名を冠した森によるブランドイメージの強化など、企業にとっても複数の価値があるため、ニーズのある企業は全国各地に存在しています。
相談先はどこが正解か、最初の一歩の選び方
最初に検討したいのは、都道府県の担当窓口や森づくりサポートセンターです。
ほぼすべての都道府県に「企業の森づくりサポート制度」が整備されており、担当部局や森づくりコミッションが企業と山林所有者をつなぐコーディネーターの役割を担っています。制度の詳細や対象エリアの確認など、幅広い情報を網羅しているため、最初の問い合わせ先として適しています。
もうひとつの有力な相談先が、地元の森林組合です。地形・道路状況・治山リスクなど、山林の現状を専門的に評価できるため、「そもそも企業の森に向いている山かどうか」を判断してもらう意味でも頼りになります。多くの制度で、企業・山林所有者・森林組合の三者が協定を結ぶ形をとっているため、早い段階で関係を作っておくと話が進みやすくなります。
NPOや民間コーディネーターを通じた相談も選択肢のひとつです。全国の森づくりコミッションや活動団体を紹介するポータルサービスも存在しており、地域を超えた企業とのマッチングを探る際には役立ちます。
制度の内容や協定の条件は自治体ごとに異なります。一度の問い合わせで全部がわかるわけではありませんが、相談を先延ばしにしている間も山林の荒廃は着実に進むという現実は見逃せません。
まとめ:遊休山林の活用、まず相談先をひとつ決めることから
企業の森への活用は、すべての山林に当てはまるわけではありませんが、アクセス条件や立地によっては十分な可能性があります。
収益よりも「管理の手放し」「荒廃防止」「社会貢献」を主な目的として考えると、企業の森は現実的な選択肢のひとつです。協定期間は10年前後に設定されるケースもあるため、将来の転用・売却の可能性も含めて条件を確認しておくことが大切です。
まずは都道府県の窓口か地元の森林組合に山林の現状を伝えてみることが、最初の一歩になります。
