相続や売却で山林の登記簿を確認したとき、「地積」として記載された面積と、実際に測った現況面積が大きく違う――そんなケースは決して珍しくありません。
「登記が間違っているのでは?」「売却で損をするのでは?」と不安になるのも無理はありません。このズレには、古い測量や境界管理など山林特有の背景が関係していることがあります。事情を整理しておくと、査定や相続、売却前の確認で迷いにくくなります。
もくじ
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山林の登記面積がズレる主な原因
古い測量技術が今も残り続けている
登記簿の地積は、土地が最初に登記された当時の測量をもとに記録されています。
かつての山林測量は、縄やコンパスを使った簡易な方法が主流でした。現代の測量と比べると精度に限界があり、地積測量図が存在しない、あるいは古い図面しかない土地では、公簿面積と現況面積に差が出ることがあります。
測量結果には一定の誤差が生じるため、精度や地形によって差の出方は変わります。山林のような広大な土地では、面積上の誤差が絶対量として大きくなりやすい点も見落とせません。
「縄伸び」が起きている
現況面積が登記面積より大きいケースで多いのが、「縄伸び」と呼ばれる現象です。
先祖代々の山林では「ここからうちの山」という慣習的な認識が引き継がれていることが多く、実際に管理してきた範囲と登記上の境界が一致していないことがあります。
ただし、注意が必要です。長年その範囲を管理してきたからといって、直ちに登記上の権利関係が変わるとは限りません。所有権や時効取得に関わる判断は個別事情によって異なるため、専門家に確認が必要です。
境界標識が消えてしまっている
山林では、杭や石などの境界標識が風化・倒木・土砂崩れによって失われやすく、元の境界線を再現するのが難しいケースが少なくありません。
境界標識が失われると、図面上の境界と現地で認識している範囲を照合しにくくなります。その結果、現況と登記のズレに気づきにくくなることがあります。
「筆界」と「所有権界」を混同すると判断を誤る
土地の境界には、「筆界」と「所有権界」の2種類があります。
筆界とは、一般に登記上の境界線を指します。当事者の合意だけで自由に変更できるものではないとされています。一方、所有権界は実際に所有権が及ぶ範囲のことで、売買や贈与、時効取得などによって変わることがあります。
筆界が不明確だからといって、所有権の有無まで直ちに否定されるわけではありません。ただし、境界と権利関係は分けて確認する必要があります。
山林では長年の占有や譲渡が登記に反映されていない結果、この2つがズレていることも珍しくありません。登記面積と現況面積の差が大きいと感じたとき、まずどちらの問題かを切り分けることが大切です。
ズレがわかったときの3つの手続き
| 手続き | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 境界確定測量 | 土地家屋調査士が隣地立会いのもと測量・図面を作成 | 売却・相続前に境界を明確にしたい場合 |
| 地積更正登記 | 登記簿の地積を実測に合わせて修正 | 測量後に隣地と合意できた場合 |
| 筆界特定制度 | 法務局が資料をもとに筆界を特定 | 裁判を避けつつ筆界を確認したい場合 |
地積更正登記は、登記簿の地積が実際の面積と異なる場合に正しい数値へ修正する手続きで、所有者が管轄の法務局へ申請します。ただし、隣地との境界に争いがある場合は、先に筆界特定や訴訟が必要になることもあります。
筆界特定制度は、裁判を経ずに法務局の筆界特定登記官が筆界を明らかにする仕組みです。あくまで「筆界」を確認するものであり、所有権界の解決とは別の話になる点は理解しておいてください。
山林の測量は地形や広さの影響で費用も期間もかかりやすく、隣地所有者が複数いる場合は立会いや合意形成にさらに時間を要することがあります。
売却時に「実測精算条件」を検討したいケース
山林の売買契約では、登記面積をベースにした「公簿売買」と、実測後に面積で精算する「実測売買」の2通りがあります。
登記面積と現況面積の乖離が大きい場合や、境界が不明確な場合は、買主や専門家と相談し、契約条件として実測精算を検討すると、面積差をめぐる認識違いを減らしやすくなります。
また、相続や税務の確認では、登記面積との差が評価や手続きに影響することがあります。相続土地国庫帰属制度などの利用を検討する場合も、境界の扱いが問題になりやすいため、要件を事前に確認しておきましょう。
まとめ:誤差か重大な問題かは専門家への相談で見極める
山林の地積と登記面積のズレは、古い測量技術・縄伸び・境界標識の消失など、複合的な原因によることが多くあります。「登記が間違い」とも「現況が間違い」とも、一律には言えません。
ズレの程度や境界の状況によって、境界確定測量・地積更正登記・筆界特定制度のどれが適切かは変わります。面積の差が大きい、境界が不明確、売却や相続を予定しているといった場合は、土地家屋調査士や山林売買に詳しい専門業者へ早めに相談するのが、判断の出発点になります。