親や祖父母から山林を相続したまま、相続登記を何年も放置しているというケースは珍しくない。「そろそろ手放したい」と動き出したとき、相続登記が未了のままでは売却の手続きが前に進まない現実にぶつかることになる。
なぜ未登記の山林は売れないのか、そして売却を実現するために何をどの順番でやればいいのか。この記事でまとめて押さえておいてほしい。
もくじ
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相続登記が未了の山林、買い手がつかない本当の理由
相続登記が済んでいない不動産は、買い手がつかず、不動産業者も原則として取り扱わないのが実務の実態だ。
専門業者によると、山林を売却するにはまず被相続人名義から相続人名義に変える相続登記を完了させ、そのうえであらためて相続人から買主へ所有権を移転するという順番が必要になる。
登記が未了の状態では、誰が正式な所有者かを書面で証明できないため、契約書の作成すら進まない。「不動産会社が名義を後から整理してくれる」と思っている人もいるが、それは誤解だ。相続登記が未了の山林は、そもそも売却の土俵に乗れないと考えた方がいい。
もう一つ、見落とされがちなリスクがある。相続登記を放置していると、世代交代によって相続人が増え続ける点だ。売却には関係者全員の同意が必要になるため、相続人が多いほど手続きは複雑になる。一部の相続人と連絡が取れなくなると、解決に数年かかることもある。
昔の相続も対象、2027年3月末という期限が迫っている
2024年4月1日から、山林を含むすべての不動産で相続登記が義務化された。
公的機関によると、不動産の相続を知った日から3年以内に申請が必要で、期限内に申請しなければ10万円以下の過料の対象となる可能性がある。
「何十年も前の相続だから自分には関係ない」という認識は通用しない。
義務化前の相続についても経過措置が設けられており、2027年3月末までの登記申請が必要とされている。かつては任意だった相続登記が、放置し続けることにリスクが伴う制度へと変わっている。
「昔の相続分は対象外」「施行前だから関係ない」という思い込みのまま動かないでいると、期限が過ぎた後に慌てることになる。
売却を実現するための手順と、かかる費用の目安
売却を実現するには、大きく次の流れで手続きを進めることになる。
- 相続人と持分の確定(戸籍謄本・遺産分割協議書などを集め、法定相続人を明確にする)
- 法務局への相続登記申請(一般的には司法書士に依頼する形が多い)
- 山林の状態確認(所在地・地積・接道状況・伐採の可否などを知っておく)
- 売却先の選定と契約(山林専門業者・製材会社・一般不動産業者などから比較する)
特にハードルになるのが「相続人の確定」だ。相続登記の未了が続いているほど、この段階で想定外の時間と手間がかかる。相続人が少数で連絡が取れる今のうちに動くことが、最大のリスク回避になる。
費用の面では、登録免許税(固定資産税評価額をもとに算出)と司法書士報酬が主な出費になる。山林特有の事情として、境界の確認や測量が必要なケースもあり、その分が上乗せになることもある。売却時も仲介手数料や測量費がかかる可能性があるため、全体の費用感を事前に知っておくと判断しやすい。
なお、相続登記を済ませても買い手がつかない場合は、相続した土地を国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」という出口もある。一定の負担金が必要で、崖地など管理が著しく困難な山林は対象外となる場合があるが、売却が難しい山林の選択肢として知っておく価値がある。
まとめ:山林売却の第一歩は相続登記の完了から
相続登記が未了のままでは、山林の売却は多くのケースで実現しない。
2027年3月末という期限も迫っており、放置するほど相続人が増えて手続きが複雑になるリスクも高まる一方だ。
「相続登記を済ませてから売却を動かす」という順序を守ることが、失敗しないための基本になる。まずは司法書士や山林専門の不動産業者に現状を相談し、相続登記の手続きを早めに進めるところから始めてほしい。

