森林経営管理制度は、自分で管理できない山林の経営管理を市町村に任せる仕組みです。ここで説明する通常の委託では、山林の所有権が市町村へ移るわけではありません。
ただし、希望すれば必ず任せられる制度でもありません。市町村は森林の状態や地域の計画、権利関係を確認して、制度で管理を引き受けるかを判断します。
まずは地番、登記名義、共有者の有無、森林の場所と管理状況を整理しましょう。そのうえで、山林が所在する市町村の林務・森林担当窓口へ対象区域と申出方法を確認するのが最初の行動です。
森林経営管理制度で市町村に任せられる山林
制度の対象は、地域森林計画に入っている森林のうち、所有者による経営管理が十分に行われていない森林です。山林ならすべて対象になるわけではありません。
市町村は、森林の手入れ状況や周辺の森林とのまとまり、地域の事情などを確認します。所有者が任せたいと答えた段階では、まだ経営管理権は設定されていません。
制度の仕組みでは、森林所有者、市町村、林業経営者の三者が関わります。市町村が経営管理権を取得した後、森林の条件によって管理の担い手が分かれます。
- 市町村が意向調査を実施していない地域や、取組の優先区域外では、相談後すぐに手続きが進むとは限りません。
- 共有、相続未登記、既存の賃貸借や施業委託がある場合は、追加の権利確認が必要です。
山林を市町村に任せる5ステップ
手続きの入口は、市町村から届く意向調査への回答だけではありません。所有者側から、市町村へ経営管理権集積計画を定めるよう申し出る方法もあります。
納税通知書や登記事項証明書などから地番を確認し、山林所在地の市町村へ地域森林計画の対象か、制度の相談を受け付けているかを尋ねます。
意向調査が届いていれば、市町村へ任せたい旨を回答します。調査前でも相談できるため、申出の様式や必要資料は担当窓口で確認してください。
市町村が森林の場所、現況、登記名義、共有者、既存の権利などを確認します。現地調査や追加資料の提出が必要になることもあります。
市町村が必要かつ適当と判断すると、対象地、期間、管理内容、収益や清算などを定めた計画案を作ります。内容を読み、関係権利者の同意を整えます。
市町村が計画を公告すると、計画内容に沿って経営管理権が設定されます。その後、森林の条件に応じて民間への再委託か市町村管理へ進みます。

経営管理権の設定後は、山林の条件によって管理の方向が二手に分かれます。林業経営に適する森林は、選定された林業経営者へ経営管理実施権が設定されます。
林業経営に適さない森林は、市町村が公的な管理を担う場合があります。ただし、市町村が計画を公告してから管理内容が正式に動き出す点を押さえておきましょう。
所有権は残る|自治体への譲渡や買取ではない
制度の委託だけで、所有権が市町村へ移るわけではありません。市町村に設定されるのは、伐採、造林、保育などを行うための経営管理権です。
ここで説明している経営管理権集積計画による委託は、山林の寄付、売却、自治体による買取とは別です。所有権に伴う負担や土地の扱いが、自動的になくなるわけでもありません。
2026年4月施行の改正では、地域の集約化構想に基づく別の計画で、林業経営者への所有権移転も扱える仕組みが加わりました。所有権を移したい場合は、山林がその取組の対象か市町村に確認してください。
三者の権利関係を整理すると、次のようになります。
| 権利 | 主な権利者 | 役割 |
|---|---|---|
| 所有権 | 森林所有者 | 土地・立木を所有 |
| 経営管理権 | 市町村 | 計画に沿って経営・管理 |
| 経営管理実施権 | 林業経営者 | 再委託された施業を実施 |
経営管理権集積計画には、どの森林を、いつから、どのように管理するかが書かれます。所有者は、少なくとも次の条件を計画案で確認します。
- 対象となる森林の所在、地番、面積が自分の認識と合っているか
- 経営管理権が始まる時期と存続期間、伐採・造林・保育の内容
- 木材販売後に利益が残る場合の金銭の算定方法、支払時期、清算方法
- 計画期間中に売却や相続などで権利が変わる場合の通知条件

木材販売収益の有無や金額は、森林の条件と計画内容で変わります。制度を使えば必ず収入が得られるわけではありません。
市町村へ相談する前に確認したい4項目
最初から正式な書類をすべてそろえる必要はありません。まず、対象地と権利関係が分かる情報を一枚にまとめると、相談が進めやすくなります。
- 納税通知書や登記事項証明書で確認できる所在・地番・面積
- 登記名義、相続登記の状況、共有者の氏名と連絡可否
- 森林の場所を示す手元の図面、現地写真、入口や目印
- これまでの間伐・管理状況、既存契約、今後の利用希望
共有者がいる場合は、誰がどの持分を持つかを確認します。所有者の一部が分からない場合や同意がそろわない場合には特例手続きもありますが、一般の委託より確認事項が増えます。
境界が分からないときは、分からない状態のまま市町村へ伝えてください。森林の図面や林地情報は位置確認に役立ちますが、資料だけで所有界が確定するとは限りません。
自治体ごとに相談様式、対象区域、調査時期、優先順位が異なります。別の市町村の必要書類をそのまま用意するのではなく、山林所在地の担当窓口へ確認しましょう。
制度が向く山林と別の方法を考える山林
森林経営管理制度は、山林を所有し続けながら、自分では難しい経営管理を任せたい場合に向きます。一方、所有権を手放したい場合は、売却や譲渡など別の方法との比較が必要です。
制度相談を優先しやすいのは、次のような場合です。
- 山林を所有し続けたい
- 自分で経営管理を続けることが難しい
- 管理内容や期間を市町村と協議できる
次の条件があるときは、別の方法も一緒に比較します。
- 所有権を手放すために売却や譲渡を希望している
- レクリエーションや独自の施業など、自分で利用する予定がある
- 市町村から制度の対象外、または当面の取組対象外と案内された
レクリエーション利用、将来の売却、独自の伐採計画などがある場合は、経営管理権の期間と管理内容が希望に合うかを確認します。計画期間中に売却や相続を予定しているなら、事前に誰へ知らせる必要があるかも計画案で確認してください。
相談後すぐに整備が始まるとは限りません。市町村は、地域の事業計画や予算、森林の状態を見て、取り組む順番を決めます。
地番と権利関係を整理して山林所在地の市町村へ相談しよう
ここで説明した通常の委託は、所有権を残したまま、市町村へ森林の経営管理を任せる仕組みです。意向調査への回答や申出だけで完了せず、調査、協議、集積計画への同意、公告を経て権利が設定されます。
手元にある地番、登記名義、共有者、森林の場所、管理状況を整理し、山林所在地の市町村へ対象区域と受付方法を確認してください。制度の対象外なら、売却、譲渡、自主管理などを改めて比較します。

