山林を「遺言書」で指定相続させる際の注意点:自筆証書・公正証書の選び方

山林を持つ親が亡くなった後、「誰がこの山を引き継ぐのか」で家族が揉めるケースは少なくありません。山は売りにくく、管理にもお金がかかる。だからこそ、遺言書でしっかりと引き継ぐ人を決めておくことが大切です。

ただ、遺言書なら何でもよいわけではありません。山林という扱いの難しい財産を具体的に指定するには、書き方や形式の選択に細かな注意が必要です。自筆証書遺言と公正証書遺言の違い、山林を遺言書に記載するときの注意点を、順を追って整理します。

山林を遺言書に書くときは、土地の特定が重要

山林のような地方の土地なら、多少書き方が曖昧でも通じるだろう。そう思っている方もいますが、実際には注意が必要です。

遺言書は、法律で定められた方式に沿って作成する必要があります。方式に不備があると、有効性を争われたり、希望どおりに手続きが進まなかったりするおそれがあります。

山林を遺言書で指定するには、所在地・地番・地積といった正確な情報の記載が重要です。まず登記事項証明書(登記簿)を取り寄せて、正確な地番・地積を確認してから書くことが基本です。「〇〇山の山林」といった書き方では、後から「どの土地を指しているのか」で争いになるおそれがあります。

自筆証書か公正証書か、山林の相続で選ぶときの考え方

山林を遺言書で指定する場合、選べる形式は大きく2つです。費用・手間・リスクの面でそれぞれ異なるため、自分の状況に合わせた判断が求められます。

費用を抑えやすいが注意点も多い、自筆証書遺言のしくみ

自筆証書遺言は自分で書けるため、費用負担を抑えやすい方法です。ただし、本文・日付・氏名の自書や押印など、形式面の確認が重要です。不備があると、有効性を争われるおそれがあります。

現在は、財産目録をパソコンで作成できる場合があります。山林の地番や地積を一覧にした目録をパソコンで整理できるため、手書きによる誤記のリスクを抑えやすくなります。ただし、目録への署名・押印など、形式面の確認は必要です。

自筆の場合に検討したいのが、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」の活用です。この制度の要件を満たして利用すれば、紛失や未発見のリスクを下げられ、家庭裁判所での検認が不要になる場合があります

ひとつ注意しておきたいのは、法務局での確認は形式面が中心という点です。内容が希望どおりの効果を持つかまでは、別途確認が必要です。 自筆で作る場合は、法務局への提出前に司法書士や弁護士に内容を確認してもらうと安心です。

費用はかかるが内容を整理しやすい、公正証書遺言のしくみ

公正証書遺言は、公証役場で公証人が関与して作成します。形式面の不備や紛失のリスクを抑えやすいことが、この形式の特徴です。自筆証書と比べると、内容を整理しながら作成しやすいという利点があります。

費用は山林の評価額などによって変わりますが、公証人手数料に加えて、依頼する司法書士や弁護士への報酬も加わることが多いです。「費用をかけてでも内容を整理して残したい」という方に向いています。

2つの形式の違いをまとめると、以下のとおりです。

項目自筆証書遺言公正証書遺言
作成費用比較的抑えやすい公証人手数料や専門家報酬がかかる場合がある
方式不備によるリスク注意が必要抑えやすい
紛失リスク保管方法に注意が必要公証役場で保管される
検認の手続き保管制度の利用有無で変わる不要とされることが多い
複雑な内容への対応自力では難しい場合も専門家と整理しやすい

特定の相続人に山林を渡すときに確認したい2つのこと

遺留分の問題は、後から請求につながることがある

山林を長男ひとりに相続させると書いた場合、他の相続人(次男・長女など)の遺留分を侵害している可能性があります。遺留分とは、一定の相続人に認められる取り分に関する制度です。

遺留分に配慮していない遺言は、直ちに無効になるとは限りませんが、他の相続人から「遺留分侵害額請求」を受けるおそれがあります。山林のような評価が難しい財産が絡む場合は特に注意が必要で、預貯金や他の財産で他の相続人とのバランスを取れるか検討しておくことが大切です。

遺言書を渡しても、手続きは相続人が自分でやる必要がある

遺言書を残しておけば、相続後の手続きは自動的に進む。そう思っている方も多いですが、実際には違います。相続登記のほか、山林の取得に関する自治体への届出が必要になる場合があります。

届出の要否、期限、提出先は土地の状況や自治体によって確認が必要です。遺言書とは別に、相続人へ確認先や必要になりそうな手続きを伝えておくと、後々の混乱を減らしやすくなります。

まとめ:山林の遺言書は「正確な記載」と「形式選び」が肝心

山林を遺言書で指定相続させるうえで、特に意識しておきたい点は以下の2点です。

  • 地番・地積は登記事項証明書で確認し、正確に記載する
  • 自筆証書を選ぶなら、法務局の保管制度と専門家への事前確認を組み合わせる

公正証書遺言は費用がかかりますが、形式面の不備を抑えやすく、山林のように評価や境界が複雑な財産を含む遺言では検討しやすい方法です。どちらを選ぶにしても、遺留分への配慮と、相続後の登記・届出を意識した内容にしておくと、家族間のトラブルを減らしやすくなります。

山林の相続は個別の事情が大きく影響します。遺言書を作る前に、司法書士・弁護士・税理士といった専門家への相談を、ぜひ検討してみてください。